高齢者の健康
2017.12.15コラム
お年寄りは家にいてあまり動かないもの、以前はこのような固定概念がありました。しかし、時は流れ、運動による効能が明らかにされるに従って、また、生物学的に元気なお年寄りが増え、活動的なお年寄りが増えてきました。
運動の効能については既に多く実験的研究が行われ、血圧に対する影響、高脂血症に対する影響、免疫系に与える影響、など様々な効果が明らかになっています。運動が体に良い影響を与えることは、このように様々に示されているのですが、残念ながら日常的に運動することが浸透していないのが現状のようです。生涯運動を基本に置き、継続的に運動してもらえるにはどうすればよいか、これが私の課題です。腰痛や、膝痛などで当院を受診された患者さんにこの考えを受け入れてもらえるように努力しています。
最近の知見では、高齢者でも一定の閾値以上の運動負荷により筋力の膨化が認められることが解ってきました(パワーリハビリ)。筋力を増強することは、転倒などによる骨折を予防する大きな力となります。また、筋力の増強とともに、バランス感覚の獲得も重要な要素と考えています。タオルギャザーといって足裏の筋肉を鍛えることにより、足の感覚を活性化させ、また、片足立ちにより平行感覚を養い、また股関節周辺の筋力アップにより転倒を予防することが可能です。リハビリなどで、衆目のあるところでこのような筋力アップをしてもらう。家にいて一人で、これがみんな出来れば誰も苦労はしない。みんなでがんばっているという連帯感が重要と思われます。
厚生労働省の方針では、老人は出来るだけ病院に行かないようさせる意図が明らかです。予防医学的なところに余計な金は使うなというところでしょうか?医療費抑制のためにという目的ですが、しかし逆にしっかりとしたリハビリをクリニックで行うことが転倒などによる骨折を予防し、脚の付け根の骨折に対する人工関節などの高額な手術費や入院費の出費を抑制することにつながると考えます。健康増進のために運動を、このスローガンは昔からずっと言われ続けてきました。厚生労働省も何がしかの施策は行っているようです。私自身もどうにかしてこの目標に向かって高齢の皆さんだけでなく、すべての年代の人達に運動する重要性を理解してもらい、実行してもらいたいと考えています。
南谷クリニック副院長 南谷哲司