究極のプライマリケアを目指して
2018.04.25コラム
皆さま、初めまして。この度、当クリニックに入職しました井戸口孝二と申します。内科・小児科外来を主として担当しますので、よろしくお願い申し上げます。簡単ではありますが、ご挨拶を兼ねて、私がこれまで取り組んできましたカテーテル治療についてご紹介させていただきます。
もともと小児科医を志して副院長と同じ京都府立医科大学に入学したのは、もう30年以上も昔になります。教養課程の2年間を経て、いよいよ医学の道がスタートしましたが、学年が進むにつれて手術で治すという外科の魅力に惹かれるようになり、大学卒業とともに外科医としての研修を開始しました。小児外科・消化器外科・呼吸器外科と幅広く外科学を修練したのち、外傷・救急領域でこれらの技術を活かすために救命救急センターで長らく勤務してきました。
救命救急センターには、昼夜を問わず、また内科や外科といった診療科を問わず、ありとあらゆる重症患者が救急車で搬送されてきます。24時間・365日体制で、1人でも多くの命を救うために、チーム一丸となって診療にあたってきました。そのなかで、救命救急医療を通じて、カテーテルによる低侵襲治療(患者さまに負担の少ない治療)の有用性を強く認識するに至り、外科手術のみならず、カテーテル治療に尽力してきました。
カテーテルとは、柔らかい材質でできた細い筒であり、これを血管の中に進めて、血管を詰めたり、逆に血管を拡げたり、その病気に応じた治療を行います。カテーテル治療の歴史は決して浅いものではありませんが、カテーテル関連医療器機の進化とともに劇的な発展を遂げ、近年最も注目されている分野のひとつです。皆さまに馴染みのあるカテーテル治療の代表は、おそらく心臓カテーテル治療ではないでしょうか。心臓を養う血管が狭くなることによって生じる病気が心筋梗塞ですが、カテーテルで狭くなった血管を拡げ、今後詰まらないようにステント(金属の筒)を留置するなどの治療を行います。
私は脳と心臓以外のあらゆる血管、すなわち最も太い大動脈から四肢の細い血管に至るまで、特に外傷・救急領域における多くのカテーテル治療を手がけてきました。通常、カテーテル治療は入院治療となりますが、外来カテーテル治療が可能な病気もありますので、今回はその代表例を二つご紹介します。今後、環境が整い次第、当クリニックでも順次対応できればと思っております。
透析シャント不全
糖尿病患者数の増加に伴い、透析を必要とする患者さまが年々増えています。一般的な透析では、事前に前腕の動脈と静脈を手術でつなげておき(シャントと言います)、週に3回、毎回2本の針をシャント血管に留置して透析を数時間かけて施行します。
年間を通じて300回以上もの頻度でシャント血管を針で刺しますし、流れの早いシャント血流によって血管の性状が変化しますので、シャント血管はどんどん痛んでいきます。
この痛んだ血管のメンテナンスを行うのが、バルーンカテーテルによる血管拡張術です。一般的には、X線透視下に、造影剤を用いてカテーテル治療を行いますが、私は更に患者さまに負担の少ない(被ばくなし、造影剤なし)エコーを用いた治療も手がけており、局所麻酔を使用した無痛のカテーテル治療を心掛けています。
透析シャントは、透析患者さまのまさに命綱です。車に例えるなら、車検をはじめとした定期的なメンテナンスをしっかり行うことにより、安全に車に乗り続けることができます。日頃からシャント血管の状態をチェックしておき、必要なタイミング(詰まる前に!)でカテーテル治療を行うことで、安心して良好な透析治療を継続することが可能となります。
当クリニックで透析を施行されている患者さまはもちろんのこと、多くの透析患者さまの大切なシャント血管を、いつまでも使用できるようにお手伝いできればと思っております。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤という病気をご存じでしょうか?下肢に拡張・蛇行した血管が浮きでることが多いですので、ご自身でお気づきの方も少なくないと思います。しかし、どのような静脈瘤を治療しなければいけないのか、また治療するならどの診療科を受診すればよいのかわからない(外科?形成外科?皮膚科?血管外科?放射線科?循環器内科?)・・・といった声をよく耳にします。
静脈は心臓に戻る血液が流れる血管ですが、下肢には2本の太い静脈があります。1本は深部静脈と言われ、筋肉の中を走行しています。他方は表在静脈で、皮膚のすぐ下を走行しており、太ももの付け根で深部静脈と合流しています。人間が立った状態でも血液が心臓に戻るように、下肢の静脈には逆流防止弁が所々に備わっています。しかし、何らかの理由で弁が壊れてしまうと、深部静脈から本来心臓に戻るべき血液が表在静脈へ逆流します。この状態が続くことによって、次々に表在静脈の弁が破壊されていきます。
その結果、表在静脈が逆流した血液によって拡張・蛇行するようになり、この異常な血管が下肢静脈瘤です。下肢静脈瘤を放置しておくと、血管が浮き出て目立つといった美容的な問題だけでなく、血液の流れがよどむことによって足がむくんだり、皮膚が黒く変色したり、ひどい場合には潰瘍を形成します。また、代表的な症状として、下肢が疲れやすくなったり、夜間のこむら返りなどが挙げられます。かつてはストリッピング術という、全身麻酔下に血管を引き抜く手術が主流でしたが、現在はカテーテル治療(レーザー焼灼など)によって大きな傷をつけることなく治療することが可能となりました。
下肢静脈瘤をお持ちの方はもちろんのこと、足のむくみやこむら返りなど、下肢に関する悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。エコー検査を行い、静脈瘤やエコノミークラス症候群の原因となる深部静脈血栓症などの血管の病気を診断し、治療についてアドバイスさせていただきます。
最後になりましたが、当クリニックでの診療を通じて、地域の皆さまの健康管理に少しでもお役にたてれば幸いです。内科・小児科といった診療の枠にとらわれず、病気についてお困りのことがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
井戸口孝二
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