成長痛と成長期スポーツ障害
2019.01.30コラム
「成長痛ですね」「成長期のスポーツ障害ですね」「成長期の骨端症です」などとお医者さんに言われたことはありませんか?お子様の診察の時に聞いたことのあるフレーズでしょう。成長痛って言われたらモヤモヤ感はあるものの何かしら納得する自分がいて……という思いの方が多いでしょう。今回はそのモヤモヤが少しでもスッキリになるように成長痛と成長期スポーツ障害について説明させていただきます。
成長痛と成長期スポーツ障害は違う
同じ意味で使っているドクターもいますが、正確には違うものです。と言うのも成長期のスポーツ障害ははっきりとした根拠のある病名(広義の意味で)であり、これを鑑別し除外した上でたどり着くのが成長痛だと考えていいでしょう。
成長痛とは?
お子さんが夕方から夜間にかけて、膝を中心とした下肢を泣くほど痛がる。寝れないほどではなく、朝にはスッキリしていることが殆どで幼稚園や小学校では普通に走ったりでき、先生からの指摘は殆どありません。
〈疫学・症状〉
痛みの頻度は不定期で、4歳頃~小学校低学年に多く長男に多いとされています。診察室にはスタスタと歩いて入室し、診察上腫れや押さえての痛みを訴えないことが多く、レントゲンでも異常がありません。これだけの陰性所見があれば成長痛と診断します。
〈原因〉
不明です。成長する骨自身の痛みであるとか心因性を指摘する文献もありますが、未だに根拠のある原因はありません。私見ですが、長男で母親が構ってくれないという家庭環境や、保育園~小学校でひとりぼっちという学校環境などが関係している症例が多い印象です。
〈治療〉
特別な治療はありません。一般的に愛護的な対応が効果ある場合が多いようです。さすってあげる、湿布を貼ってあげる、温めてあげる、冷やしてあげるなど子供が安心する、気持ちよく感じる事をしてあげてください。
〈鑑別〉
むずむず脚症候群
文字通り脚の不快感を訴える病気ですが、子供の場合痛みとして訴えることもあります。
ペルテス病
大腿骨頭が壊死を起こして圧壊する病気です。跛行(正常に歩けないこと、引きずるように歩くこと)やレントゲンで診断できます。股関節の病気ですが子供は膝の痛みとして訴えることもあります。
感染症
痛みで歩けない。発熱などで鑑別します。
その他
白血病、骨腫瘍、若年性関節リウマチなど。
〈親の対処・心構え〉
成長痛は子供の成長とともに少なくなりますし、後遺症が残ったりしませんから優しく対処してあげて下さい。しかし、本当は成長痛ではないのに成長痛と片付けられてしまうことが危険な事ですので子供が下肢を痛がった場合は整形外科でしっかり診てもらうことが大事です。
成長期のスポーツ障害
成長期のスポーツ障害は成長痛とは違い明らかに臨床所見や原因があり、対処法・治療法があります。主な病気の紹介とその原因、対処方、治療法について簡単にお話しします。成長期にはまず骨が成長し、筋肉がそれを追いかけるように身体が作られていきます。男子の場合は高校1~2年生、女子は中学3年生ほどまでが成長期です。この時期の骨は、両端が軟骨になっていて、骨端線と呼ばれる部分から骨が伸びていきます(成長線とも言います)。そのため、骨、関節は成人と違って構造的に弱く、強いけん引力、圧迫力が繰り返し働くと、傷ついたり変形したりして障害が生じやすいのが特徴です。ですので成長期のスポーツ障害の多くは骨端核や骨端線の障害である骨端症です(図1,2)。次にその代表的な疾患を紹介します。
〈オスグッド病〉
10~16歳頃に膝下に発生する障害です。膝の下の骨(脛骨結節)が隆起し痛みを感じ、運動で痛みが強くなります。炎症が強くなると運動もできなくなり日常生活でも痛くなります。
過度な運動による膝蓋靱帯(膝の皿と脛骨をつなぐ靱帯)の牽引力で起こりますが、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が硬いと発症リスクが上がります。オーバーユースも原因の一つですので運動制限が基本です。患部のアイシングも効果的です。再発予防には専用のサポーターを着用します。一番大切なことは大腿四頭筋のストレッチの強化でタイトネスを緩和することです。
〈有痛性外脛骨障害〉
足の足根骨の一つ舟状骨に後脛骨筋腱が付着している部分(足首の内側くるぶし前下部)の痛みです。レッグヒールアライメント(ふくらはぎとかかとのリズム)が乱れ扁平足になると発症リスクが高くなります。
〈踵骨骨端症〉
踵骨(かかとの骨)の骨端線部に過剰な刺激が加わり発症します。10歳前後の男児に多く、シーバー病とも言います。かかとの軽い腫れ疼痛があり、強くなると歩行時痛も出てきます。骨端線部にはアキレス腱の引っ張り力と走ることによる地面の突き上げ力がかかり発症します。症状に応じて運動制限をします。
〈野球肘障害〉
投球の繰り返しにより肘の内側(小指側)と外側(親指側)に障害が出ます。外側は骨同士がぶつかり、軟骨が損傷したり剥がれたりします(離断性骨軟骨炎)。内側は内側側副靱帯に張力がかかり骨ごと剥がれます(裂離骨折)。レントゲンやMRI検査で診断します。
最近は超音波(エコー)検査で診断できるようになりました。検診時のエコー検査で早期発見も可能になりました。裂離骨折があればギプス固定が必要で、基本的には投球禁止になります。
〈リトルリーグ肩〉
小中学生の投手や捕手の上腕骨近位部(腕の骨の付け根)に骨端離開(成長線がずれる)を生じます。オーバーユースと投球フォームによるところが強く、ピッチングによるねじれの力と遠心力による引っ張り力が骨端線に大きな負荷がかかることが原因です。診断はレントゲンとMRI検査でわかります。3ヶ月以上の投球禁止が必要な場合が多いです。
成長痛と成長期のスポーツ障害の違いがわかりましたでしょうか?子供の足の痛みでお悩みがあれば、整形外科担当医までご相談ください。また機会があれば成長期のスポーツ障害について更に詳しく説明したいと思います。